Gampsocleis buergeri
キリギリス
本州・四国・九州・伊豆諸島
南西諸島(奄美大島以北)
7月上旬~10月上旬
本土に広く生息するキリギリスの一種。日当たりの良い草原に生息し、日中の暑い日に草の中腹あたりで鳴いている。見かけによらず警戒心が非常に強いので、人の気配を感じるとすぐに草の根際に落ちて、藪の深い方へと逃げて行ってしまう。そのため、鳴き声はすれども姿を見せてくれることは少ない。集団で鳴くときは、他の個体と音が重ならないよう順番に鳴く習性がある。通常は翅は短めで飛ぶことはないが、ごく稀に長翅型と呼ばれる翅が長い個体が出現し、飛翔することができる。個体群によって形態が異なり、青森県から岡山県まで分布するヒガシキリギリス、近畿から南西諸島にかけて分布するニシキリギリスの2種に分ける考えがあるが、分子系統解析がなされておらず、結論は出ていない。かつて、ヒガシキリギリスはニシキリギリスのシノニムであるとされたが、国内ではやはり別種であるとの見解が強い。神奈川県の一部では、ヒガシキリギリスとニシキリギリスの両方の形質をもつ個体群が生息しており、交雑したものではないかと考えられている。この他にも地域によって特徴が異なる個体群がおり、さらに種を細分化すべきとの見方もある。今後の研究結果を待ちたい。トカラ列島から奄美大島にはニシキリギリスが見つかっていて、移入による一時的な発生と思われたが、現在も局所的に生息しているようだ。北海道にはハネナガキリギリス、沖縄県にはオキナワキリギリスが分布する。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
キリギリス若齢幼虫
若いキリギリスの幼虫はすべて緑色をしている。この頃はまだ肉食傾向は弱い。
キリギリス中齢幼虫
前脚と中脚の棘が発達してきている。この頃には他の昆虫を捕らえて食べるようになる。
キリギリス♂
夏のよく晴れた日に草むらの中から鳴き声が聞こえる。図体の割に警戒心が強くすぐ逃げてしまう。
キリギリス♀
東日本では、褐色の体に黒斑の多い翅をもつ個体が多い。メスは産卵をしに開けた場所に出てくることがある。
近縁種
Gampscleis ussuriensis
ハネナガキリギリス
北海道に分布するキリギリスの一種。草地に生息するが、花壇のような人工的な場所でも見られる。7月下旬~10月に成虫が発生し、日中の陽がよく当たる時間に表に出てきて活動する。短い夏を有効に使うためか、キリギリスとしては警戒心は薄く、観察しやすい。