Glyptobothrus maritimus
ヒナバッタ
北海道・本州・四国・九州
4月下旬~1月上旬
日当たりの良い草地に生息する小型のバッタ。分布域も広いためとても身近な種類である。バッタの中ではいち早く孵化し、4月下旬には成虫が見られる。6月頃から徐々に成虫が減ってきて1化目の発生が収束するが、8月頃から2化目の新成虫が現れ始める。寒さに強く、秋に成虫になった個体が翌年の1月まで生きることも珍しくない。中には3月まで生き延びたケースも確認されている。ヒナバッタのオスは後脚を前翅に擦り付けて鳴く。オス同士の場合は一定の音量で激しく鳴き、お互いのテリトリーを主張する。一方メスに対しては、徐々に音量を上げるような鳴き方をして求愛する。晴れて暖かい日にはよく鳴いているので、それぞれのヒナバッタが今どんな状況なのか、音で確認してみるのも楽しい。バッタの仲間には遺伝的に赤い色素しか作れない個体がいるが、ヒナバッタは比較的見つかりやすい。毎年のようにどこかの地方新聞が「赤いバッタ」がいたと取り上げているが、大抵ヒナバッタである。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
ヒナバッタ初齢幼虫
3月の上旬には姿を現す。春に孵化するものとしては最も早い。触角が付け根に向かって太くなるのが特徴。
ヒナバッタ若齢幼虫
色彩変異の個体。潜性遺伝するので、1匹いれば周辺を探すと他にも何匹か見つかる。
ヒナバッタ♀
模様には多少のバリエーションがみられるが、すべて褐色である。数が多く、あまり遠くへは飛ばないため捕まえやすい。
近縁種
Stenobothrus fumatus
ヒロバネヒナバッタ
山地に生息するヒナバッタの一種。北海道・本州・四国・九州に分布する。成虫は夏から秋にかけて出現する。外見上はヒナバッタとほとんど変わらないが、オスは前翅の前縁部分が広がる。後脚を交互に前翅に擦り合わせてリズミカルに鳴く。
Chorthippus intermedius
タカネヒナバッタ
山地に生息するヒナバッタの一種。丘陵地から亜高山帯まで分布し、東北南部から中部にかけて確認されている。薄い黄色味を帯びることで他種とは区別しやすい。胸部背面のくの字模様は直線的。ヒロバネヒナバッタと混生するが、生息密度はあまり高くなく数も少ない印象がある。夏の少し早い時期に出現し、秋まで見られる。
写真は匿名希望の第三者よりご提供いただきました。
Chorthippus fallax yamato
ヤマトコバネヒナバッタ
亜高山帯~高山帯に生息するコバネヒナバッタの亜種。群馬県と長野県の県境付近の山で見られる。翅が短く、胸部背面のくの字模様は円弧のような曲線を描くのが特徴。背は黒く、顔は白っぽい。コバネヒナバッタは地域ごとに複数の亜種が存在し、エゾコバネヒナバッタ、ヤツコバネヒナバッタ、アカイシコバネヒナバッタが知られている。また未記載の別亜種として、フジコバネヒナバッタ、キソコマコバネヒナバッタが報告されており、他にもまだいる可能性がある。