Ornebius fuscicerci
ヒルギカネタタキ
美声
南西諸島
6月中旬~11月中旬
ヒルギカネタタキは、南西諸島に分布するマングローブ林に生息するカネタタキの仲間で、日本のカネタタキ類の中でも特に美しいとされている。その生息環境は非常に特殊で、潮の満ち引きによって地表が海水に浸るような場所に限定される。そのため、内陸部に生息するリュウキュウカネタタキと明確な棲み分けをしていると言える。しかし、奄美大島では海岸林など内陸部でも観察されており、これはリュウキュウカネタタキの個体数が奄美大島では少ないことが要因の一つと考えられる。オヒルギやヤエヤマヒルギなどのマングローブ植物上で発見されることが多いが、カネタタキ類が好むような狭い空間は限られているため、探索にはある程度の経験とコツが必要となる。鳴き声は、「チッ、チッ、チッ、チッ…」と、一般的なカネタタキよりもテンポが速く、やや鋭い印象を受ける。メスはオスの鳴き声に反応し、後脚を地面に叩きつけることで振動を発生させる。成虫の寿命は比較的短く、夏の訪れが早い八重山諸島では8月いっぱいまでしか見られないことが多い。沖縄本島、奄美大島、そして分布北限の種子島へと北上するにつれて、成虫の出現時期は遅くなる傾向がある。
成虫の姿
オス
メス
生態写真
ヒルギカネタタキ初齢幼虫(飼育下)
カネタタキの特徴である鱗片はまだない。頭部がわずかに黒いのが特徴。幼虫は夜行性の傾向が強い。
ヒルギカネタタキ中齢幼虫
全身が黒っぽい鱗片で覆われているのが特徴。尾肢はやや長い。
ヒルギカネタタキ終齢幼虫
終齢幼虫になると鱗片に白い部分が見られるようになる。産卵管があるのがメス。
ヒルギカネタタキ♂
成虫オス。オレンジ色の前翅が黒い体に映える。すべてのカネタタキに言える事だが、発生初期にこそ見て欲しい。
ヒルギカネタタキ♀
成虫メス。オスと比べるとやや地味な印象。尾肢が閉じているが、これは交尾の際にオスの尾肢とぶつからないためと思われる。
ヒルギカネタタキのペア
カネタタキの仲間は、ペアが仲睦まじい様子で一緒にいることが多い。見ていて微笑ましい。